DIARY
タケシの独立
KOMAで9年勤めてくれたタケシが独立する。 この9年でKOMAは大きく成長した。人数は6人から21人になり、売上も4倍以上になった。仕事の内容も働き方も全く別の会社になったと言ってもいいくらいだ。 タケシはその成長に大きく貢献した立役者の1人である。 会社の成長に合わせて環境は目まぐるしく変化し、ポジションをめぐる競争も生まれた。それらについて来れず淘汰されていく者もいる中、常に最前線で会社や若い衆をリードしてくれた。そしてタケシにとっても結婚や子育てなど多くの変化があった9年でもあった。 タケシが持っているセンスや感性は、幼少からずっとものづくりが好きだった者だけが持っているそれである。柔らかく穏やかな性質に加えて、つべこべ言い訳せずきちっと結果に向かって進む強さもある。おまけに、ものづくりに負けず劣らずユーモアのセンスも持ち合わせている。だからタケシはみんなの人気者だ。 そんなタケシの送別会は泣いて笑って、みんなの温かい気持ちが通う時間になった。それは彼の9年がKOMAにとってかけがえのないものであったことを証明していた。 また仕事で関われる日が待ち遠しい。今まで本当にありがとうありがとう。 Takeshi, who was with us for 9 years is going out on his own. KOMA has grown substantially in these years.The crew has...
タケシの独立
KOMAで9年勤めてくれたタケシが独立する。 この9年でKOMAは大きく成長した。人数は6人から21人になり、売上も4倍以上になった。仕事の内容も働き方も全く別の会社になったと言ってもいいくらいだ。 タケシはその成長に大きく貢献した立役者の1人である。 会社の成長に合わせて環境は目まぐるしく変化し、ポジションをめぐる競争も生まれた。それらについて来れず淘汰されていく者もいる中、常に最前線で会社や若い衆をリードしてくれた。そしてタケシにとっても結婚や子育てなど多くの変化があった9年でもあった。 タケシが持っているセンスや感性は、幼少からずっとものづくりが好きだった者だけが持っているそれである。柔らかく穏やかな性質に加えて、つべこべ言い訳せずきちっと結果に向かって進む強さもある。おまけに、ものづくりに負けず劣らずユーモアのセンスも持ち合わせている。だからタケシはみんなの人気者だ。 そんなタケシの送別会は泣いて笑って、みんなの温かい気持ちが通う時間になった。それは彼の9年がKOMAにとってかけがえのないものであったことを証明していた。 また仕事で関われる日が待ち遠しい。今まで本当にありがとうありがとう。 Takeshi, who was with us for 9 years is going out on his own. KOMA has grown substantially in these years.The crew has...
寿司屋
寿司屋が好きだ。 最近流行りの予約が取れないとかコースだとか何だか気取った感じではなく、ふらっと行って馴染みの大将にお任せで握ってもらう。 寿司と日本酒に詳しいって少し憧れるが、下手をすると1人で一升呑んでしまうこともあって、大将から聞く魚や酒のウンチクは一向に覚えられない。 この酒は冷酒でも冷や酒でもいけるよ「何処」の「某」で今が旬の「何々」の稚魚で「云々」。。 聞いてるそばから全部忘れてしまう。 結果として「美味いくて幸せだなあ」という気持ちだけが残る。 その度に寿司屋という仕事が羨ましくなる。 今だけの旬の素材を使って、それを楽しみに待つ目の前の客のために腕を振るい作品を完成させる。 そしてその作品は客の腹に収まった瞬間に感動と共に完結する。 その潔さにシビレる。 まるで一つのエンターテイメントのステージを見ているようだ。 それと比べると家具作りは時間の軸が全く違う。 材木は使えるまで何年も寝かせる必要があるし、それから何ヶ月もかけて家具を作る。 「家具作りは感動までのスピードが何だかジレったいんですよ。完成した後もずっと責任があるしね」と大将にいうと。 「いやいや。アタシは逆に作品が残るそっちが羨ましいよ。家具は100年先の未来にも作品が残ることだってあるわけでしょ?ロマンがあるよ!こっちなんか食ったら影も形も残らないんだからさぁ」 「まあねぇ。でもやっぱ寿司屋はLIVEやってるみたいでかっこいいっすよ」 職人同士の「無い物ねだり」だ。...
寿司屋
寿司屋が好きだ。 最近流行りの予約が取れないとかコースだとか何だか気取った感じではなく、ふらっと行って馴染みの大将にお任せで握ってもらう。 寿司と日本酒に詳しいって少し憧れるが、下手をすると1人で一升呑んでしまうこともあって、大将から聞く魚や酒のウンチクは一向に覚えられない。 この酒は冷酒でも冷や酒でもいけるよ「何処」の「某」で今が旬の「何々」の稚魚で「云々」。。 聞いてるそばから全部忘れてしまう。 結果として「美味いくて幸せだなあ」という気持ちだけが残る。 その度に寿司屋という仕事が羨ましくなる。 今だけの旬の素材を使って、それを楽しみに待つ目の前の客のために腕を振るい作品を完成させる。 そしてその作品は客の腹に収まった瞬間に感動と共に完結する。 その潔さにシビレる。 まるで一つのエンターテイメントのステージを見ているようだ。 それと比べると家具作りは時間の軸が全く違う。 材木は使えるまで何年も寝かせる必要があるし、それから何ヶ月もかけて家具を作る。 「家具作りは感動までのスピードが何だかジレったいんですよ。完成した後もずっと責任があるしね」と大将にいうと。 「いやいや。アタシは逆に作品が残るそっちが羨ましいよ。家具は100年先の未来にも作品が残ることだってあるわけでしょ?ロマンがあるよ!こっちなんか食ったら影も形も残らないんだからさぁ」 「まあねぇ。でもやっぱ寿司屋はLIVEやってるみたいでかっこいいっすよ」 職人同士の「無い物ねだり」だ。...
広報担当・長女リコ
最近インスタグラムのフォロワーが14万人を超えた。 一年で10万人以上増えた。 俺の娘であるリコが動画制作から発信までを担当している。 きっかけは一年半ほど前だろうか、家族で出かけた時のこと。今時の女子らしく何やら色々とスマホで撮っているとは思っていたが、帰りの車中で編集した動画を見せられてびっくりした。 まとまりのある画角、飽きのこないテンポ、完成までのスピード、そのどれもが普通の女子のそれではない。 やりすぎず、やらなすぎず、ちょうど良く抜けた感じが特にすごかった。ものづくりにおいてこのバランス感覚はすごく重要で、なかなか身に付けられないことでもある。 「おまえ凄いじゃん!才能あるよ!」そう言うと「こんなの全然普通だよ。今時はみんなできるよ」とリコ。 「クリエイションの世界でやってきた俺には分かる!おまえは普通じゃない!」 そうして試しにアルバイトでKOMAの動画を作ってもらうことになったのだが、最初の動画で37万回再生という結果を出した。 「ほら!やっぱり普通じゃないじゃん!」 当時学生だった彼女は親の会社では世話にはなりたくないと言っていた。俺も自分の子供と働きたいとは思っていないが、ただこの力をKOMAで活かしたかった。 「一つの部門を任されて仕事するなんてやりがいあると思うよ〜」などと口説き文句を並べて2023年の4月から正式に入社してもらい、KOMAの日々を発信する部門が新たにスタートした。 思えば幼い頃から少し変わった視点を持つ子だった。 リコが3歳の頃、お祭りでもらった金魚が死んで一緒にお墓を作ったことがある。泣き止まないリコに「どうしてそんなに泣いてるの?」と聞くと、「明日になったらこの悲しい気持ちを忘れちゃうことが悲しい」と答えた。面白い子だなあと思った。 よく笑う明るく愉快な女子へと成長していく彼女だったが、内側にはちゃんと重たく鬱々とした澱のようなものも見えた。陰と陽、騒と静、集と散など感情や思考のプラスマイナスの振り幅が大きいのだ。 こういう子は一般的な社会では生きづらさを感じることもあるのだろう。だから中学では不登校の時期もあったし、高校は退学になったりもした。 ただ俺にはそのどれもが彼女にとってのポジティブな過程に思えた。 そして、こういう子はギアが入って走り出したら、普通じゃないスピードで成長していくことを知っている。 今、走りはじめたのだ。
広報担当・長女リコ
最近インスタグラムのフォロワーが14万人を超えた。 一年で10万人以上増えた。 俺の娘であるリコが動画制作から発信までを担当している。 きっかけは一年半ほど前だろうか、家族で出かけた時のこと。今時の女子らしく何やら色々とスマホで撮っているとは思っていたが、帰りの車中で編集した動画を見せられてびっくりした。 まとまりのある画角、飽きのこないテンポ、完成までのスピード、そのどれもが普通の女子のそれではない。 やりすぎず、やらなすぎず、ちょうど良く抜けた感じが特にすごかった。ものづくりにおいてこのバランス感覚はすごく重要で、なかなか身に付けられないことでもある。 「おまえ凄いじゃん!才能あるよ!」そう言うと「こんなの全然普通だよ。今時はみんなできるよ」とリコ。 「クリエイションの世界でやってきた俺には分かる!おまえは普通じゃない!」 そうして試しにアルバイトでKOMAの動画を作ってもらうことになったのだが、最初の動画で37万回再生という結果を出した。 「ほら!やっぱり普通じゃないじゃん!」 当時学生だった彼女は親の会社では世話にはなりたくないと言っていた。俺も自分の子供と働きたいとは思っていないが、ただこの力をKOMAで活かしたかった。 「一つの部門を任されて仕事するなんてやりがいあると思うよ〜」などと口説き文句を並べて2023年の4月から正式に入社してもらい、KOMAの日々を発信する部門が新たにスタートした。 思えば幼い頃から少し変わった視点を持つ子だった。 リコが3歳の頃、お祭りでもらった金魚が死んで一緒にお墓を作ったことがある。泣き止まないリコに「どうしてそんなに泣いてるの?」と聞くと、「明日になったらこの悲しい気持ちを忘れちゃうことが悲しい」と答えた。面白い子だなあと思った。 よく笑う明るく愉快な女子へと成長していく彼女だったが、内側にはちゃんと重たく鬱々とした澱のようなものも見えた。陰と陽、騒と静、集と散など感情や思考のプラスマイナスの振り幅が大きいのだ。 こういう子は一般的な社会では生きづらさを感じることもあるのだろう。だから中学では不登校の時期もあったし、高校は退学になったりもした。 ただ俺にはそのどれもが彼女にとってのポジティブな過程に思えた。 そして、こういう子はギアが入って走り出したら、普通じゃないスピードで成長していくことを知っている。 今、走りはじめたのだ。
俺と亀井と青山支店
この夏、東京の青山に2号店を出せることになった。 まだ薄い上着を羽織っていたから4月頃だったと記憶しているが、1~2年後を目標に青山出店の計画を立てるため、まずは家賃相場を見に亀井やショップのメンバーと青山へ連れ立った。 ただのそれだけだったから全くの予定外だったのだが、外苑西通り沿いにあるその小さなビルにみんなで一緒に一目惚れをしてしまった。 それは小さな4階建てで、こじんまりとしているがフロアーが分かれているからいろんな試みができそうだった。 そして打ちっぱなしのコンクリートがところどころ朽ちている感じが良い雰囲気を出していて、本店の荻窪店と同様にどこか物作りの現場のような匂いがするところもすごく気に入った。 「どうする?すごい良かったな?」 「いやいや準備も計画も何もしてないよ?」 「でももう出会えないかもよ?」 「いやいや今の今はまだ早いんじゃない?」 シラフで出来る話じゃないとビールを飲みながら30分。 「何とかなるだろ!やってみよう!」 そんなふうにしてすぐに出店が決まった。 思えば20年前、まだ25歳だった俺と亀井でKOMAの立ち上げ準備をしていた頃。 あんなふうになりたい、こんな物が作りたい、どんな店を持ちたいなどと夢を見ながら、とてもじゃないが手の届かないこの青山の街を憧れの眼差しで何度も歩き回ったことを思い出す。 それから20年の間、俺と亀井の関係は様々だった。 一年で喧嘩別れをして、また一緒にはじめたり、互いを認め合えない時期もあったが、ピンチの時こそ絶対に逃げない亀井の姿勢が何度もKOMAを救ってきた。 そんな紆余曲折を経て深厚な敬意と信頼が持てるようになった今、俺たちは最高の相棒になれたと思っている。 それもこれも、クソみたいな人間である俺に対するあいつの努力と我慢の賜物だと理解している。...
俺と亀井と青山支店
この夏、東京の青山に2号店を出せることになった。 まだ薄い上着を羽織っていたから4月頃だったと記憶しているが、1~2年後を目標に青山出店の計画を立てるため、まずは家賃相場を見に亀井やショップのメンバーと青山へ連れ立った。 ただのそれだけだったから全くの予定外だったのだが、外苑西通り沿いにあるその小さなビルにみんなで一緒に一目惚れをしてしまった。 それは小さな4階建てで、こじんまりとしているがフロアーが分かれているからいろんな試みができそうだった。 そして打ちっぱなしのコンクリートがところどころ朽ちている感じが良い雰囲気を出していて、本店の荻窪店と同様にどこか物作りの現場のような匂いがするところもすごく気に入った。 「どうする?すごい良かったな?」 「いやいや準備も計画も何もしてないよ?」 「でももう出会えないかもよ?」 「いやいや今の今はまだ早いんじゃない?」 シラフで出来る話じゃないとビールを飲みながら30分。 「何とかなるだろ!やってみよう!」 そんなふうにしてすぐに出店が決まった。 思えば20年前、まだ25歳だった俺と亀井でKOMAの立ち上げ準備をしていた頃。 あんなふうになりたい、こんな物が作りたい、どんな店を持ちたいなどと夢を見ながら、とてもじゃないが手の届かないこの青山の街を憧れの眼差しで何度も歩き回ったことを思い出す。 それから20年の間、俺と亀井の関係は様々だった。 一年で喧嘩別れをして、また一緒にはじめたり、互いを認め合えない時期もあったが、ピンチの時こそ絶対に逃げない亀井の姿勢が何度もKOMAを救ってきた。 そんな紆余曲折を経て深厚な敬意と信頼が持てるようになった今、俺たちは最高の相棒になれたと思っている。 それもこれも、クソみたいな人間である俺に対するあいつの努力と我慢の賜物だと理解している。...
従業員じゃなくて仲間
家具製作やデザイン以外に会社を運営するというのも俺の役割の一つだ。 とは言えまだ20人にも満たない小さな会社をやっているだけで、べつに経営者なんて程の者ではないと自覚しているが、一応トップとしてやらなきゃならないことはある。 まずは「楽しそうな未来を想像してそれが叶うまでブレないこと」 あれやこれやと迷ったり引き返したりしても、それはゴールに向かうために必要な過程であって達成するまでヤリ切るということ。 そして最も大切にしているのは「ただの従業員ではなく、仲間になってもらうこと」 一緒に会社づくりに参加してもらって小さな成功を共に楽しんでもらう。 会社の方向性に対してテメエの都合でブーブー文句を言うクソ従業員ではなく、どうやったら最短最速で達成できるかを共に考え行動してくれる仲間だ。 全員参加で昼間っから呑み食いしながら無礼講で会社に対して意見を言い合う「クリエイティブDAY」なんていう日もある。 新人でも誰でも意見が言えてそれが採用されればすぐ翌日から会社が動くようにいつも心掛けている。 最近ではサーフィン、スノーボード、バイク、キャンプ、釣り、書道などなどそれぞれの趣味を共有して思いきり楽しむ「部活の日」なんていうのも始まって、そんな全てが良いチームをつくり良いものづくりに繋がっている。 サラリーマンから職人に転向してきた遠藤が言ったことがある。 「以前は会社の大きな船にただ乗ってる感覚だったけど、KOMAは小さなボートで大海原に出るのをリアルに感じる。それぞれの得意分野を活かして、方位磁石を見たりオールを漕いだり魚を釣って飯を用意する。そこにやり甲斐や楽しみを感じる」 そうそう。ちゃんと伝わってるなぁと思った。 「経営者は孤独」なんて言葉を耳にするけど、それは経営者と従業員の間に立場という垣根を作るからだろう。 トップとしての俺の仕事は仲間を大切にして、示した方向の責任をとるだけで特別な事じゃない。立場じゃなくてただ役割が違うだけだと思っている。 だからKOMAにいるのは経営者とか従業員じゃなくて、少しづつ船が大きくなってちょっと遠くに行けるようになったことを共に喜べるクルーだ。
従業員じゃなくて仲間
家具製作やデザイン以外に会社を運営するというのも俺の役割の一つだ。 とは言えまだ20人にも満たない小さな会社をやっているだけで、べつに経営者なんて程の者ではないと自覚しているが、一応トップとしてやらなきゃならないことはある。 まずは「楽しそうな未来を想像してそれが叶うまでブレないこと」 あれやこれやと迷ったり引き返したりしても、それはゴールに向かうために必要な過程であって達成するまでヤリ切るということ。 そして最も大切にしているのは「ただの従業員ではなく、仲間になってもらうこと」 一緒に会社づくりに参加してもらって小さな成功を共に楽しんでもらう。 会社の方向性に対してテメエの都合でブーブー文句を言うクソ従業員ではなく、どうやったら最短最速で達成できるかを共に考え行動してくれる仲間だ。 全員参加で昼間っから呑み食いしながら無礼講で会社に対して意見を言い合う「クリエイティブDAY」なんていう日もある。 新人でも誰でも意見が言えてそれが採用されればすぐ翌日から会社が動くようにいつも心掛けている。 最近ではサーフィン、スノーボード、バイク、キャンプ、釣り、書道などなどそれぞれの趣味を共有して思いきり楽しむ「部活の日」なんていうのも始まって、そんな全てが良いチームをつくり良いものづくりに繋がっている。 サラリーマンから職人に転向してきた遠藤が言ったことがある。 「以前は会社の大きな船にただ乗ってる感覚だったけど、KOMAは小さなボートで大海原に出るのをリアルに感じる。それぞれの得意分野を活かして、方位磁石を見たりオールを漕いだり魚を釣って飯を用意する。そこにやり甲斐や楽しみを感じる」 そうそう。ちゃんと伝わってるなぁと思った。 「経営者は孤独」なんて言葉を耳にするけど、それは経営者と従業員の間に立場という垣根を作るからだろう。 トップとしての俺の仕事は仲間を大切にして、示した方向の責任をとるだけで特別な事じゃない。立場じゃなくてただ役割が違うだけだと思っている。 だからKOMAにいるのは経営者とか従業員じゃなくて、少しづつ船が大きくなってちょっと遠くに行けるようになったことを共に喜べるクルーだ。
神代欅のcocoda chair
灰や土砂に1000年以上埋まっていた木のことを神代木と呼ぶ。 神の時代の木という意味だ。 埋まっていた場所の成分により色が変わり、特に緑がかった黒になる黒神代は希少価値が極めて高い。 この黒神代欅は秋田県で採掘されたもので、鳥海山から噴き出した灰によって立ったまま埋まっていたらしい。 2020年の10月に東京中央木材市場で一目惚れをして競りに参加して手に入れた。 「この先はもうお目にかかれないくらいの上物だ」と市場のオヤジも太鼓判をおした銘木中の銘木。 2021年の4月に茨城に上手な製材所があると聞いて神代欅の丸太を持ち込んだ。 大きな製材機のノコが丸太に入ると、今までの製材作業では経験したことのない男性物の香水のような甘くスパイシーな香りが立ち込めた。 丸太の製材は、どんなに高価なものでも実際に切ってみないと分からないという博打のようなもので、切ってみたら全然ダメで大損をこくなんていう事もある。 だから最初の一切り目はドキドキしながら祈るような気持ちでいる。 そして丸太の端から端までノコが通っていざ中身があらわれると、切断面は黄色と淡い緑のマダラ模様だった。 黒色を想像していたから「ハズレか?。。」と拍子抜けしていると。 「これからどんどん濃い緑になっていくから見てな」と製材所のオヤジが言った。 その言葉どおり5分、10分、15分と時を追うごとに黄色だった部分が緑色に変わっていく。 丸太から切り出された板が次々に積み上がっていくと、深みのある香りと共にひんやりとした空気に包まれて、まるで未開の森の奥深くにポツンと立っているような錯覚を覚えるほどだった。 なんだか心地がよくて、ぼんやり目を閉じていたが大きな声でハッと我に返った。 「大当たり!間違いなしの上物だ!」そう言いながら製材所のオヤジが笑っていた。 それから約2年倉庫で自然乾燥をして、待ちに待った製作が始まった。 椅子の形になるまでは順調だったが、いざ刃物の仕上げ作業に入ると何かがいつもと違う。 迷いがあるようで思うように作業が進まない。...
神代欅のcocoda chair
灰や土砂に1000年以上埋まっていた木のことを神代木と呼ぶ。 神の時代の木という意味だ。 埋まっていた場所の成分により色が変わり、特に緑がかった黒になる黒神代は希少価値が極めて高い。 この黒神代欅は秋田県で採掘されたもので、鳥海山から噴き出した灰によって立ったまま埋まっていたらしい。 2020年の10月に東京中央木材市場で一目惚れをして競りに参加して手に入れた。 「この先はもうお目にかかれないくらいの上物だ」と市場のオヤジも太鼓判をおした銘木中の銘木。 2021年の4月に茨城に上手な製材所があると聞いて神代欅の丸太を持ち込んだ。 大きな製材機のノコが丸太に入ると、今までの製材作業では経験したことのない男性物の香水のような甘くスパイシーな香りが立ち込めた。 丸太の製材は、どんなに高価なものでも実際に切ってみないと分からないという博打のようなもので、切ってみたら全然ダメで大損をこくなんていう事もある。 だから最初の一切り目はドキドキしながら祈るような気持ちでいる。 そして丸太の端から端までノコが通っていざ中身があらわれると、切断面は黄色と淡い緑のマダラ模様だった。 黒色を想像していたから「ハズレか?。。」と拍子抜けしていると。 「これからどんどん濃い緑になっていくから見てな」と製材所のオヤジが言った。 その言葉どおり5分、10分、15分と時を追うごとに黄色だった部分が緑色に変わっていく。 丸太から切り出された板が次々に積み上がっていくと、深みのある香りと共にひんやりとした空気に包まれて、まるで未開の森の奥深くにポツンと立っているような錯覚を覚えるほどだった。 なんだか心地がよくて、ぼんやり目を閉じていたが大きな声でハッと我に返った。 「大当たり!間違いなしの上物だ!」そう言いながら製材所のオヤジが笑っていた。 それから約2年倉庫で自然乾燥をして、待ちに待った製作が始まった。 椅子の形になるまでは順調だったが、いざ刃物の仕上げ作業に入ると何かがいつもと違う。 迷いがあるようで思うように作業が進まない。...